副社長は束縛ダーリン
「私は、あなたの趣味に合わなくなったということね?」
「悪いね」
「いいわよ。気にしないで。私を求める男は、掃いて捨てるほどいるもの。その中から伴侶を選べばいいだけの話よ」
彼女は怒るのではなく、悔しそうにするのでもなく、口元に上品な笑みを湛えてそう言った。
それは決して強がりではなく、本当のことなのだろうと感じられた。
彼女と結婚すれば、望月フーズの経営に関わることができる。そのメリットは、野心家の男性たちには魅力的だ。
加えて彼女は美女でもあり、妻にすれば誰もが羨むことだろう。
きっとお見合い話が嫌になるほどありそうで、美人なお嬢様の苦労を思った。
悠馬さんにプロポーズしたということは、周囲に早く結婚しろと言われているのかな。
お見合いじゃなく、自分が望む相手と恋愛結婚したいよね……。
思わず哀れみの目を向けたら、彼女を不機嫌にさせてしまう。
私に冷たい視線を浴びせてから、彼女は背を向けて非常口のドアノブに手をかけた。
ドアを開けて二階の通路に出ていきながら、独り言のような言葉を残す。
「私に群がる男はうざったいほどいるのに、どれもこれもイマイチなのよね……」