副社長は束縛ダーリン
私から積極的にアピールしたのは、あのときくらい。
そのアピールも、恋愛事ではないけれど。
考えてみても、どうやって悠馬さんを射止めたのか分からなかった。
彼からのデートの誘いに応じていたら、告白されてとんとん拍子で付き合う流れになっただけ。
私からこれといったアクションを起こしたことはなく、恋愛テクニックのようなものを駆使したこともない。
常時受け身の恋愛を、悠馬さんとはしてきたわけで……。
「ユッコ、ごめん。全然分からないよ。私はただ彼に選んでもらっただけなんだ」
行く手には四角い枠の噴水があり、人の流れがそこで淀んでいた。
噴水の縁は、待ち合わせや休憩する人が腰かけて、空きスペースはない。
その前に立ってスマホをいじっている人も十人ほどいて、私たちの足も噴水前で自然と止められる形となった。
結局、期待外れの答えしかできなかった私は、ユッコに小さな溜め息をつかせてしまう。
申し訳ない気持ちをどうにかしたくて「荷物持つよ」と彼女のショッピングバッグに手を伸ばしたら、「そんなことしなくていいから。気を使わせてごめん」と苦笑いされた。