副社長は束縛ダーリン
意外な言葉を返されて、グラスから手を離して振り向こうとしたら、背後に板の間が軋む音がして、逞しい二本の腕に捕らえられた。
背中に彼の温もりを感じ、照れ臭さと喜びに鼓動が速度を上げ始めると、驚くことを言われる。
「時間を作って、二班の開発室に立ち寄るようにしているのは、朱梨に会うためじゃない。
さっき朱梨が言った牽制という言葉は、その通りだよ」
「冗談、ですよね……?」
「本気だよ。朱梨は恋愛対象に見られてないと言うけど、どうかな……。俺の彼女に『朱梨ちゃん』と気安く呼ぶ男たちだからね。目を光らせておかないと、いつ手を出してくることか。
牽制と防衛のために、これからも時間を見つけて顔を出すよ」
右横に振り向くと、至近距離ある整った顔。
学生時代テニス部だったという彼は、肩や腕や胸に張りのある、ほどよい筋肉を備えていて、ときおり試合中のような挑戦的で精悍な目つきをする。
綺麗な顔で男らしい色気を纏う彼は、ニヤリと口の端を上げて見せた。
なにを戸惑っている?と言いたげに。