副社長は束縛ダーリン
正解が分からなくて、取りあえず「私は悠馬さんを愛してます」と言葉で伝えたら、頬杖をついた彼に怪しむような目で見られ、「どうだか」と言われてしまう。
「いつも俺に内緒で勝手なことをするじゃないか。今回は、俺を賭けての勝負を受けてくる始末だし」
「ごめんなさい……」
それについては心から申し訳なく思う。
本当は嫌だったのに……という言い訳は意味がない。実際に断らずに承諾して、悠馬さんの心を傷つけてしまったのだから。
再び私が縮こまると、小さな溜め息をつき、彼は話を締めくくる。
「まぁいい。過ぎたことを責め続けても仕方ない。これからは望月と接触するな。電話にも出るな。なにかあれば俺に言って。分かった?」
「はい」
「よし」と言って悠馬さんは立ち上がり、私の頭をポンポンと優しく叩いて、契約書とスマホを手にソファーに戻っていった。
よかった……。
悠馬さんは許してくれたようだし、コロッケ勝負もしなくていい話になった。
緊張から解放されてホッと息を吐き出した後は、ハッとして慌ててコンロの前に立つ。
カレールーを入れる前の野菜と肉を煮込み中で、鍋の蓋を開けると、水嵩が半分ほどに減り、ジャガイモが煮崩れてしまっていた。
あーあ。ジャガイモがなくなっちゃった。
火を止めて、話し合えばよかったかな……。