副社長は束縛ダーリン
そう思いつつ、お湯を足して火を止め、市販のカレールーを鍋に入れたら、悠馬さんのスマホが鳴った。
それはメールではなく電話のようで、また望月さんからかと私が身構える先では、彼が「親父からだ」と呟いていた。
なんだ社長からか……仕事の電話かな?
「はい」と電話に出た彼は、話しながらリビングのドアを開け、廊下に出ていった。
私の意識はまた鍋に戻る。
木ベラで混ぜてルーを溶かし込み、隠し味にソースとケチャップを少々入れて……。
そのとき廊下から、「はあ!?」と大きな声がして、驚いた私はケチャップの容器を思いっきり押してしまった。
鍋の表面は赤くなり、これではカレーなのかハヤシライスなのか分からなくなってしまう。
焦って、混ざる前におたまでケチャップをすくおうとしたら、今度は慌てたような悠馬さんの話し声が聞こえてきた。
「親父、考え直して。それを受けられない事情がこっちには……いや、なんでもない。とにかく俺としては……」