副社長は束縛ダーリン
なんだろうと、おたまを持つ手を止め、ドアの方を見たら、ハッと思い出した。
それは解決したものとしたコロッケ勝負についての、望月さんとの会話だ。
今まで私のレシピは、一度も商品化されたことがないから、いくらやる気を出したところで勝負は無理だと説明したら、彼女にこう言われたんだ。
『朱梨さんのレシピで十二月に新商品を出すよう、圧力をかけておく』
そんなことできるのかと疑問を投げると、『簡単よ』とも言われた。
もしかして、社長からの電話は、それに関することだったりして……。
火を止めて、急いで悠馬さんのもとに駆けだしたら、リビングのドアが開き、電話を終えて戻っきた彼と出くわした。
一度は許してくれた悠馬さんだったけど、その顔には怒りが戻され、先ほどよりもさらに不愉快そうにしかめられていた。
「あの……」と問いかける私と目を合わせてくれず、彼は床を睨みつけ、「やられた」と吐き捨てるように言った。