副社長は束縛ダーリン
じゃあ、どうすればいいの?
慌てた私は悠馬さんの腕に縋り、「断ってください。お願いします!」と頼み込む。
しかし私の手はやんわりと解かれて、「無理だ」と冷たい返事をされてしまった。
「すべての決定権は俺じゃなく社長にある。朱梨は望月と勝負をすることに決まったんだ。ただし、お前が負けても俺は望月と交際しない。
なんでこんなことに……ったく、俺は関わらないぞ。勝手にやってろ」
悠馬さんはソファー前のテーブルに置いていた財布だけを手に取ると、「出かけてくるから。夕食はいらない」と言い置いて、家を出ていってしまった。
かなりの怒りの中にいることが、ひしひしと伝わってきて、私は彼を止められなかった。
私と一緒にいたくないと思ったのかな……。
いや、違う。
怒りを私にぶつけないために、どこかで冷静さを取り戻そうとしているのだろう。
独占欲が強くて私を支配しようとする人だけど、そこにはいつも愛情と優しさがあるから……。
出ていったのは私を思ってのことだと感じても、せっかく作ったカレーを食べてもらえないことや、彼のいない広い静かな部屋は寂しくて、悲しみが込み上げる。