副社長は束縛ダーリン

無人の廊下を見つめていると、目に涙が浮かんできたが、それが流れ落ちる前に手の甲でグイと拭い、私は唇を噛みしめた。


愛想を尽かされても仕方ないことをしたのは自分なのだから、悠馬さんに泣きついたりせず、自分の力でなんとかしないと。

要は勝てばいいのよ。

勝って、悠馬さんのことは諦めてくださいと、望月さんに言ってやるんだから。


サイドボードの上に置いていた通勤用のショルダーバッグの中から、レシピノートを取り出してダイニングの椅子に座り、それを開いた。

ペンを握りしめて、早速新作レシピの開発に取りかかる。


私だって開発部員。

過去最高のレシピを完成させ、この恋を守り通してみせると、心に闘志をみなぎらせていた。
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