副社長は束縛ダーリン
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望月さんとの勝負のためのコロッケ製作を始めてから、ひと月半ほどが経ち、十月も後半に突入していた。
東京の街は秋色に染まり、枯葉が足元で乾いた音を立てる。
朝八時二十分、私は悠馬さんと並んで吊革に掴まり、電車に揺られている。
彼のマンションから会社までは電車でふた駅。
平日の多くはこうして一緒に通勤している私たちだが、会話は少なく、気まずい思いでいた。
ひと月半ほど前、社長指示でコロッケ勝負が決まってしまった後に、怒って家を出ていった悠馬さん。
あの日は夜遅くに帰ってきて、そのまま寝てしまったんだけど、翌朝は笑顔で「おはよう」と声をかけてくれた。
それ以降、悠馬さんが不機嫌さを露わにすることはなく、一見仲よく暮らしている私たち。
でも違う。
当たり障りのない話題を選んで会話して、コロッケ勝負について彼は決して触れようとしない。
夜の営みもしばらくないし……やっぱり怒っているのよね……。