副社長は束縛ダーリン

駅に到着して、電車を降りる。

その際に急いでいる人が私を押し出すように後ろからぶつかってきて、私はつんのめるように転びそうになった。

「あっ!」と声を上げると、斜め前を歩いていた悠馬さんが振り返り、抱えるように支えてくれたから難を逃れる。


「ありがとうございます」と笑顔を向けたのに、彼の返事は「ん」と一音だけ。

口元に無理やり笑みを作っているけれど、その目は少しも笑っていなかった。


普通にしようと努力してくれる彼だが、その無理をしている感じが反って、気づまりな空気を生み出す。

彼のマンションを出て、もとのアパートに戻った方がいいのかもしれない。

でも、そうすればこの恋が自然消滅してしまいそうで、怖くてできない。

だからこうして彼の不機嫌さを感じるたびに、私は心で謝るしかなかった。

悠馬さん……不愉快な思いをさせてごめんなさい……。


改札を出て、社屋までの徒歩五分ほどの道のりを歩く中でも会話はなく、社屋に入れば「じゃあね」と背を向けられる。

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