副社長は束縛ダーリン

開発に費やせる月日は半分を経過したというのに、まだこれといったコロッケができずにいた。


揚げたてのコロッケを包丁で半分に割って、中の具合を確かめる。

うん、断面は予定通りで綺麗。

カボチャとサツマイモと男爵芋の三層コロッケは、カットしてお弁当に入れたら見栄えがすると思って考案し、今、形にしたものだ。


次は味を……。

口に入れて咀嚼して、飲み込む前に私は首を横に振る。

残念。見た目がよくても、味は三流。

変に甘くて、ご飯のおかずにならないし、デザートコロッケと捉えるとしたら、逆に甘さが足りない。

糖分を添加すれば、健康志向の主婦層に敬遠されそうだからやめた方がよさそう。


これも駄目か……と溜め息をついたけど、落ち込んでいる暇はない。

事態は『できませんでした』で済む話ではなくなっているのだ。

唇を引き結んで眉間に皺を寄せ、やらなければ!という思いに自然と怒り顔のようになっていたら、調理台を挟んだ向かいから声をかけられる。


「北さん、ちょっと怖いよ。かわいい感じの写真にしたいから、笑って?」


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