副社長は束縛ダーリン

さっきから調理中の私に向けて、パシャパシャとカメラのシャッターを切り続けているのは、広報部の若い男性社員。

取られた写真は、うちの社のウェブサイトにあげられている。

コロッケ勝負のための開発風景を、ブログ形式で三日に一度、世に発信しているのだ。


コロッケ勝負は、私と望月さんの個人間のものではなくなり、今はもう、社と社の対決となっている。

とはいっても、火花をバチバチと散らしたり、社運を賭けてといった深刻なものではなく、もっと気楽なイベントとしての対決だ。

この勝負で勝った方のコロッケは今後も発売を続け、負けた方は販売中止というだけのペナルティー。

それがお互いの会社間で交わされた契約で、うちの社長としては、話題性があって一時的な冷凍コロッケの売上アップを期待しているだけみたい。


私と望月さんが、悠馬さんを賭けて交わした契約書のことは当事者以外誰も知らないから、必死なのは私だけ……。

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