副社長は束縛ダーリン

「すみません。こんな感じでいいですか?」


写真を撮られている暇もないのにと思いつつ、作り笑顔で、失敗作のコロッケを箸でつまんで口元に持っていく。


「そうそう、いいよ〜その顔」


笑顔の写真を撮り終えると、広報部の人は「それじゃ、頑張ってね」と簡単な激励をくれて、開発室を出ていった。


私はすぐに次のレシピに取りかかる。

昨夜、家で考えてきたレシピは十個。

悠馬さんと一緒にベッドに入ったのは零時頃で、彼が眠りに就いたのを見計らって、こっそりと起き出し、明け方までかけて考えてきたレシピだ。

それをすべて試作したいところだけど……夕食の支度をしなければならないから、十九時までしか残業できない。

それまでに、十個のレシピを形にできるかな?

ひとつのレシピを作るにしても、材料の種類や配合を細かに変えて、何通りも作るから、時間がかかる。

開発室にこもっている間はあっという間に時間が経ってしまい、目の回るような忙しさの中に私はいた。


< 291 / 377 >

この作品をシェア

pagetop