副社長は束縛ダーリン
「朱梨、レシピノート見せて。次は……これね。ジャガイモの潰しの程度はどれくらい?」
隣でそう言ったのは、泉さん。
前は私が補助をしていたが、今は逆で、二班の全員が代わる代わる私のアシストをしてくれている。
そのことに感謝しつつ、壁掛け時計に目を遣って、泉さんに言う。
「お昼休みですよ。私は入ってる暇はないけど、泉さんは休憩してください」
「入らないよ。そのつもりでお弁当持ってきてないの。朱梨の試作品でお腹いっぱいになるし、私の昼休憩を気にしなくていいから。それより早く、次の指示をちょうだい」
「泉さん……ありがとうございます。すみません。ええと、ジャガイモの潰し具合は……」
彼女だけではなく、昼休みを利用して、他の班員たちも私の周囲に集まり、「手伝うよ」と口々に声をかけてくれた。
切って混ぜて潰して、計量したり、衣をつけたりと、手伝ってくれる優しい先輩たちに心が熱くなる。