副社長は束縛ダーリン

体がフワリと浮いた気がするけれど、これは夢の中での出来事だろうか……。


「無理をしすぎだ。これ以上はやめて。レシピは適当なものでいいから……」


夢の中で目を開けると、私を横抱きにしているのは、うちの社のマスコットキャラクターのユキ丸くんだった。

ユキ丸くんって、人間の言葉を喋れるんだと感心しつつ、適当なレシピでいいと言われたことに反論する。


「ダメなの。私は絶対に勝たなくちゃ……。これからもずっと、悠馬さんと一緒にいたいから……」

「朱梨……」


ユキ丸くんはなぜか、苦しそうな悲しそうな、申し訳なさそうな顔をして、私を見つめている。

そんなユキ丸くんの顔も、ぼやけてすぐに見えなくなり、私の意識は夢さえない、深い眠りの中に落ちていった。



それから、どれくらいの時間が経ったのか……。

あくびをして目を覚ました私は、悠馬さんのマンションのいつものベッドに寝かされていた。

カーテンは閉められているけれど、窓の外に眩しい日差しを感じる。


マズイ、寝坊した!

今日、試作するためのレシピを考えずに眠ってしまったんだ!

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