副社長は束縛ダーリン
「飲んで。水分は多めに取らないと。
食欲はある? オートミールやお粥ならすぐに作れるよ。食べられそう?」
ストローに口をつけたけれど、吸うことができずに涙が溢れていた。
久しく聞いていなかった、私を気遣う優しい言葉に胸が熱くなる。
ひと月半前、怒られて呆れられて見放され、もし勝負に勝ったとしても、捨てられてしまうんじゃないかと、頭の隅で考えていた。
でも、私を心配してくれる彼から感じるのは、愛情のふた文字。
よかった……。
私のことをまだ好きでいてくれるんだ……。
膝の上から床にノートパソコンを下ろした彼は、添い寝するように隣に体を横たえ、両腕を私に回して布団の上から抱きしめる。
「どうして泣いてるの?」
「悠馬さんに嫌われたんじゃないかって、怖かったから……」
「大丈夫。朱梨を愛してるよ。
倒れた朱梨を見つけて、心臓が止まりそうになった。無理をさせたのは俺のせいだよな。ごめん……」
その言葉でさらに涙の量が増す。
私が倒れたのは体調管理ができていなかった自分のせいであり、悠馬さんのせいじゃないのに。
彼に謝らせるのではなく、むしろお礼を言わないと。
倒れた私を助けてくれたのは、ユキ丸くんじゃなくて悠馬さんだったのだから……。