副社長は束縛ダーリン
「糖質の種類を変えた方がいい。オリゴ糖と黒糖の二種類に。子供のお弁当を作るのは大抵お母さん。今のお母さんたちは健康志向だから。それから……」
甘くて子供受けするコロッケでも、それを買うのは多くの場合、母親。
母親に受け入れられないと購入してもらえないということで、班長、三上さんの厳しいアドバイスは続いた。
「油も変えたいけど、コストがな……別の生産ラインを確保するほど売れる保証はないし。
とにかく体にいいイメージを持たせて。緑黄色野菜の粉末を混ぜるとか、カルシウム配合とか。
それと、今回は星やハート型はやめとこう。いかにも冷凍食品だからね」
「え……」と呟いてしまったのは私で、このコロッケの形を星やハートにすれば完璧だと思っていたから、先読みの駄目出しをされた気分で驚いていた。
すると、三上さんの目が私に向いてギクリとさせられる。
『全くこの子は仕方ないな』と言いたげな、親のような優しい溜め息をつき、彼は補足してくれた。
「形が丸の方がいいのは、手作りにも見えるようにと考えてのことだよ。お母さんたちの手間を省きつつ、プライドも守ってあげないとね。
ソースで顔を書いたり、ソーセージで耳をつけたり、工夫もしやすいし。
朱梨(あかり)ちゃん、分かった?」
「なるほど。よーく分かりました!」