副社長は束縛ダーリン
「冷凍コロッケ勝負のための、アシストチームです」
アシストチーム……?
首をかしげた後に、私はポンと手の平を叩く。
そういえば一昨日、寝ている場合じゃないと焦る私に悠馬さんは『俺が手伝うから大丈夫』と言ってくれた。
彼が直接的な補助をする気なのかと疑問に思っていたら、『俺にできる方法でバックアップする』と補足もしていた。
悠馬さんにできるやり方での手伝いとは、アシストチームを作ることだったんだ。
「ご多忙の中、無理を言って依頼を引き受けていただいた方々です。順に紹介します。こちらは……」
悠馬さんの隣に立つのは、グレーのスーツを着た小柄な男性で、年齢は三十半ばくらいに見える。
名前は神野(じんの)ゼツさんと言い、フードコーディネーターとして活躍しているそうだ。
あれ、その名前をどこかで聞いたような……。
紹介の言葉を聞きつつ記憶を探ると、ハッと思い当たる。
この人、有名な料理雑誌でコラムとレシピを連載している人だ。
確か『神の舌を持つ男』というキャッチフレーズがつけられていて、一度口にした料理は再現できるらしい。
神野さんがメニュー開発に携わった飲食店は繁盛するという噂もあり、スケジュールは向こう三年も埋まっていると、雑誌の記事に書いてあった覚えがある。