副社長は束縛ダーリン

「悠馬さん、ありがとうございました。私、頑張りますね。絶対に勝ってみせます!」


笑顔で決意表明して、彼に背を向けドアへと歩き出す。

すると「待って」と言われ、足を止めた私に、後ろからスーツの腕が回された。

途端に鼓動が速度を上げて、顔が熱く火照る。


今まで何度も抱きしめられたことがあるというのに、変なの。

社内というシチュエーションのせいで、こんなにも照れくさく感じてしまうのかな……。


ひとり恥ずかしがる私の耳元で、悠馬さんは真面目な声で注意を伝えたきた。


「頑張りすぎて無理しないでよ。残業は一時間まで。コロッケだけで済まさずに、バランスのいい食事を三度取ること。睡眠時間は六時間を確保。日曜は仕事をしない。それと家事は俺もやるから残しておいて。分かった?」

「はい」


即答したのは、私も身に染みているから。

体調を崩して寝込んだ方が時間のロスになる。
無理をしても、いいことはないのだと。

< 307 / 377 >

この作品をシェア

pagetop