副社長は束縛ダーリン
「悠馬さん、ありがとうございました。私、頑張りますね。絶対に勝ってみせます!」
笑顔で決意表明して、彼に背を向けドアへと歩き出す。
すると「待って」と言われ、足を止めた私に、後ろからスーツの腕が回された。
途端に鼓動が速度を上げて、顔が熱く火照る。
今まで何度も抱きしめられたことがあるというのに、変なの。
社内というシチュエーションのせいで、こんなにも照れくさく感じてしまうのかな……。
ひとり恥ずかしがる私の耳元で、悠馬さんは真面目な声で注意を伝えたきた。
「頑張りすぎて無理しないでよ。残業は一時間まで。コロッケだけで済まさずに、バランスのいい食事を三度取ること。睡眠時間は六時間を確保。日曜は仕事をしない。それと家事は俺もやるから残しておいて。分かった?」
「はい」
即答したのは、私も身に染みているから。
体調を崩して寝込んだ方が時間のロスになる。
無理をしても、いいことはないのだと。