副社長は束縛ダーリン

◇◇◇

悠馬さんが私のためにアシストチームを作ってくれた日からひと月半ほどが過ぎ、秋も終わりを迎えようとしていた。

今日は十一月最後の週の水曜日。

コロッケ勝負のためのレシピは一昨日やっと完成して、私は今、会議室にいる。


プロジェクタースクリーンの前には、間に通路を挟んで長机がふたつ横並びにされ、それが十列。

最前列には社長を含む重役たちが座っていて、もちろんその中には悠馬さんもいる。

他の列には開発、広報、事業部など関係部署の部長と、製造工場のトップと担当者にも来てもらった。

後方は開発部員の馴染みのある顔触れだった。


スクリーンの前に立ち、画像やグラフや表に説明を加えている私は、重役たちに気後れしそうになるので、なるべく前列に視線を止めないようにしている。

これは商品化の是非を問う会議ではなく、レシピを発表する場で、もう時間がないから作り直せとは言われないと分かっている。

それでも社長や専務を相手に発表しなければならないこの状況では、緊張しないわけにいかなかった。


「このコロッケは、ソースをかけずに食べることを想定し、タネの味をしっかりと濃いものにしています。その分、しつこくならないように油は……」


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