副社長は束縛ダーリン

頼もしいアシストチームに助言をもらって……というより、言われるがままにできあがったのは、ミートチーズコロッケ。

男爵芋にこだわりのミートソースを絶妙なバランスで混ぜ込み、中心には三種のチーズを埋め込んでいる。

揚げるタイプのコロッケではなく、レンジで加熱するだけの冷凍コロッケで、手の平サイズの小判形。

ひとパック四個入りの価格は、たくさんの人に買ってもらえるよう、利益を見込めるギリギリの原価率の二百三十九円を希望したい。


材料や製造工程の詳しい解説に、価格設定の他にパッケージについても希望を言わせてもらって、プロジェクターを用いての説明を終えた。

次は試食をしてもらう。


照度を戻した会議室の壁際で、三台の電子レンジが稼働し始める。

二班のメンバーがミートチーズコロッケを温め、小皿にのせて前列から順に配ってくれた。

ここからは重役たちに視線を背けてはいられない。

湯気の立つコロッケを箸で割り、断面を凝視している専務を、私が緊張しながら見つめる。


「色が綺麗だな。オレンジ色をしたタネから、チーズが溶け出す様子はインスタ映えしそうでいいな」


専務は、悠馬さんのお姉さんの旦那様。

年齢は確か四十歳くらいだったと思う。


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