副社長は束縛ダーリン
ゆっくりと味や食感を確認しながら咀嚼して飲み込んだ社長は、私と視線を合わせて頷いてくれた。
「北さん、合格」
「ありがとうございます!」
「先ほどの説明で調理油にかかるコストが気になるところだったが、食べて納得したよ。それだけかける価値はある。油の配合を決めるには苦労したんじゃないかい?よく考えたね」
「あ、ありがとうございます……」
二回目のお礼の言葉が尻すぼみになってしまったのは、調理油について褒められたから。
その部分は、百パーセント私が考えたものではなかった。
揚げ油は、菜種と大豆と、グレープシードオイルというぶどうの種子から絞った値の張る油を六、三、一の割合でブレンドしている。
アッサリした中にコクもあり、ビタミンEがたっぷりと含まれる調理油となっていた。
それを決めたのは食用油を研究している大学教授と神野さん。
私に至っては、『グレープシードオイルってなに?』と首をかしげつつメモを取るだけだったのだ。
褒められても、ばつの悪い思いで肩をすくめるしかない私は、社長から逸らした視線を悠馬さんに向けた。