副社長は束縛ダーリン

悠馬さんは一昨日のレシピが完成した日に、このコロッケを試食している。

そのときにも『美味しい』と言ってもらえたが、今は副社長としての講評を聞かせてくれた。


「子供からお年寄りまで幅広い層に受け入れられるコロッケだと思います。ミートソースとチーズの組み合わせという安心できるレシピの中に、調理油の配合などは挑戦的な試みで、おもしろみがあります。素晴らしいレシピです。
三ヶ月間、北さんはよく頑張ってくれました。ありがとう」


悠馬さん……私の方こそ、ありがとうございます。

アシストチームがいなければ、このコロッケは誕生していなかった。

でも私のレシピと言えなくて、それについてはモヤモヤとした思いが残るところだけど……。


悠馬さんが優しく微笑みかけてくれるから、私もつられて頬が綻ぶ。

社長は、そんな私たちに視線を一往復させてから、左隣に座る悠馬さんの脇腹を控えめに小突いていた。


私と悠馬さんの交際は社内の誰もが知っていると思っていたけど、どうやら社長は知らなかったらしい。

それをつい最近になって誰かから聞かされた社長にからかわれたと、この前、悠馬さんは照れくさそうに教えてくれた。


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