副社長は束縛ダーリン

自宅で夕食の支度をしながら、悠馬さんの帰りを待っていた夜のこと……。


***


『レシピを完成させられた?』


身構えて電話に出た私に彼女は、どこか楽しそうな声でそう言った。

もしや、こっちの情報を探ろうとしているのでは……。

そう怪しんだ私は、「完成しましたけど、なにも教えてあげませんよ」と素っ気ない返事をする。

しかし彼女は聞き出そうとするのではなく、なぜか望月フーズ側のレシピを積極的に教えてくれた。


商品名は『大人の贅沢コロッケ』。

うちのレシピと同様にレンジで温めるタイプのコロッケで、付属のソース付き。

ひとパックに和洋中の三種類の味付けのコロッケが入っていて、国産黒毛和牛やトリュフ、フカヒレなど、高級食材を使っていることを売りにするそうだ。


最近、『大人の』という言葉をつけた商品が売れているのは知っている。

プチ高級感を出すことで、四百九十八円という、冷凍コロッケにしてはかなり高めの値段設定でも売れると予想しているらしい。


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