副社長は束縛ダーリン

『悠馬ったら電話に出てくれないのよ。あなたからよろしく伝えてね』


望月さんがクスクスと笑いながらそう言って、電話は切れた……。


***


一昨日の夜の、彼女との会話を思い出してしまったことで、ミートチーズコロッケでは勝てないのではないかという思いが、私の中で急速に膨らんでいく。

どうしよう……。


「それでは今日はここまでに。次にこの顔触れで集まるのは祝勝会だな」


機嫌のよさそうな声で社長が言って、それぞれが椅子から立ち上がる音が会議室に響く。

やっぱりミートチーズコロッケじゃ駄目だ。

私のレシピじゃないことにも心がモヤモヤしているし、一か八かで、こっちのレシピで勝負させてもらえないだろうか?


ドアに向かう社長や専務に私は慌てて駆け寄り、引き止めた。


「すみません! やっぱり、こっちのレシピで勝負させてください!」


私が今日の説明のために用意したファイルの中には、無関係のレシピも一枚混ざっていた。

それは昨日作ったレシピ。

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