副社長は束縛ダーリン
望月さんから電話があったのは一昨日の夜で、対決用のレシピはできあがっているというのに、それからずっと落ち着かない気持ちにさせられた。
その気持ちを紛らわせようと昨日、肉の松屋の再現コロッケを作っていて、揚げる前の状態のものを開発室の冷凍庫に入れていた。
急いで揚げて戻らないと。
とにかく食べてもらえば、きっと社長にも伝わるはずだから。
開発室に戻ってきた私が冷凍庫を開けていると、二班の他のメンバーも後を追って、飛び込んでくる。
「朱梨、なにがどうしたのいうの?」
そう聞くのは泉さん。
「朱梨ちゃん、本当に違うレシピでいくつもりかい?」
三上さんもハラハラした面持ちで、私に問いかけてくる。
「はい。ミートチーズコロッケじゃ駄目なんです。私は私のレシピで勝負します」
キッパリと言い切った私は、トレーに二十個並べた小判形のコロッケを取り出し、みんなにお願いする。
「手伝ってください。ラードとサラダ油を一対一のブレンドで。急いで揚げて戻らないと社長が帰ってしまうかも……」