副社長は束縛ダーリン
それから十五分ほどが経ち、揚げたてのコロッケのトレーを両手に、私は息を切らせて会議室に戻ってきた。
よかった……社長も悠馬さんも、他の重役や工場関係者もみんな、帰らずに待っていてくれた。
しかし、ミートチーズコロッケの発表後の和やかさは完全に消え失せて、全員が渋い顔をしている。
特に悠馬さんが……そのしかめっ面は、かなり怒っているという証拠よね。
二班のメンバーに手伝ってもらって、小皿にのせたコロッケを配って回り、あとは試食する重役たちの様子を指を組み合わせて正面から見守っていた。
「美味しことは間違いないが……」
そう言った専務は腕組みをして、首をかしげている。
社長もひと口食べて、難しい顔を私に向ける。
「定番のコロッケとして普通に商品化するならいいとしても、今回は勝負だからな。
特徴がないコロッケに、一体どんな言葉をつけて売るつもりかい?」
「ええと……懐かしのコロッケとか、お肉屋さんのコロッケとかでしょうか……」