副社長は束縛ダーリン

会議室は静まり返っていた。

みんな社長の返答を待っているのだ。

数秒の沈黙の後に、社長の溜め息が聞こえ、それから「いいだろう」というありがたいお言葉も耳にした。


パッと顔を上げると、悠馬さんとよく似た社長の目は楽しそうに笑っていた。


「北さんは不思議な女の子だな。根拠がないのに、君を信じて応援したくなる。それがうちの息子を虜にした、君の魅力かな?」

「え? あ、あの……」

「悠馬の執心っぷりは私の耳にも聞こえているよ。どうだい、この勝負に勝ったら嫁にくるかい?」


嫁という言葉に瞬時に顔が真っ赤に染まり、なんて返事をしたらいいのかとうろたえる。

すると会議室に大きな笑いが湧いて、急に明るい雰囲気が戻ってきた。


笑われたことで、社長の言葉が冗談だとやっと気づいた私は、真に受けて動揺したことに恥ずかしくなる。

さ迷わせた視線を悠馬さんに向けたら……彼はからかわれたことにムッとして、横目で社長を睨んでいた。


そうだよね。悠馬さんはまだ結婚なんて考えていない。

交際期間は一年にも満たないのに、結婚を意識するのは早いよね……。

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