副社長は束縛ダーリン
大きな手が私の手首をむんずと捕まえたら、「待ってください」という声がして、私の手首から警備員の手を外す人がいた。
「悠馬さん!?」
悠馬さんは会社帰りといった姿で、スーツの上に黒いビジネスコートを羽織り、鞄を下げている。
上手く説明できない私に代わり、彼が理路整然と事情説明してくれた。
さらには冷凍コロッケの棚から私のコロッケを持ってきて、パッケージにプリントされている顔写真を見せたら、完全に誤解は解けた。
さっきまで怖い顔をしていた警備員のおじさんが、今は笑って謝ってくれる。
「そうでしたか。これはとんだ勘違いをして、すみませんね」
「いえ、こちらこそ疑われても仕方ない態度を取りました。ご迷惑をおかけして申し訳ありません。ほら、朱梨も謝って」
呆れ顔の悠馬さんに促され、私は慌てて「すみませんでした」と頭を下げた。
「もういいですよ。事情はよく分かりましたから。しっかし、コロッケ勝負をやってるとは知らなかった。不審者扱いしてしまったお詫びに、仕事終わりにひとパック買って帰ります」
「本当ですか! ありがとうございます!」