副社長は束縛ダーリン

どうして私があの店にいると分かったのか、という質問は不要。

以前渡された時計型GPSは常に持ち歩くように言われていて、今日もハンドバッグに入れていたから。

私の所在地が何時間もあの店から動かないことを不審に思い、悠馬さんは駆けつけてくれたということだろう。


ソファーに縮こまるようにして座る私。

売れ行きはウェブサイトで確認するだけにして、勝負が終わるまではもうゴトーヨーカドーには行かないと反省していたら、急に鼻がムズムズし始めた。


くしゃみが出そうだけど、ここでしてしまったら……。

『風邪? あんなに長時間冷凍食品売り場をうろつくからだ』と、さらに叱られてしまいそう。


それで私は急いで口元を押さえ、くしゃみを我慢する。

目を瞑って体を固くして震わせ、なんとか堪えようと頑張っていた。


「それから、もうひとつ言いたいことがある。嬉しい言葉をかけられても、俺以外の男の手を取るのは……」


今度は嫉妬心からの注意を始めた悠馬さんだったが、途中でやめて、その後の声の調子がなぜか急に柔らかくなる。


「まぁ、いいか……。今日のことは結果として、ほんの少しは売上アップに繋がったから、よしとしようかな。だから、泣かなくてもーー」

「ハックション!! あ……出ちゃった」

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