副社長は束縛ダーリン

◇◇◇

冬曇りの空に冷たい風。

来たるクリスマスに向けてムードを盛り上げる街。

そんな中で、私の頭はコロッケのことでいっぱいになっていた。


今日は十二月十八日月曜日で、望月さんとの勝負の十日間は、昨日が最終日だった。

でも結果はまだ発表されていない。

私がいるのは会社ではなく、都内のゴトーヨーカドー四十六店舗の中で一番規模の大きな店。

一階フロアを進むと専門店が並ぶエリアがあり、その先にちょっとしたイベントを開催できる吹き抜けの広場があって、そこに勝負の結果を発表するための特設ステージが設けられていた。


時刻はもうすぐ開始予定の十一時になるところ。

広場の端には巨大なクリスマスツリーが飾られていて、その陰に隠れるようにして、ステージをチラチラと覗く私。

心静かにステージ横に待機していることはできなくて、始まるまではここに潜んでいようと思っていた。

そんな私の隣には悠馬さんがいる。


「朱梨、そろそろステージ横に行かないと」

「ま、待ってください。もう少しだけここに……まだ心の準備が……」


< 339 / 377 >

この作品をシェア

pagetop