副社長は束縛ダーリン

自分の服装に視線を落とすと、いつもの見慣れた割烹着。

同じ白い服でも、彼女となんという違いだろう。


でもこれを着ていないと平常心を保てない。

緊張を少しでも和らげようとして着てきた割烹着だけど、颯爽とした彼女との違いに、不安が増す思いでいた。

見た目や地位や賢さだけじゃなく、コロッケでも負けてしまうのでは……。


「朱梨、落ち着いて。今焦ってもどうにもならない。結果はすでに出ていて、これからそれを聞くだけなんだから」


悠馬さんの言うことはその通りなんだけど、不安いっぱいの心の慰めにはならずに、私はオロオロするばかり。

ツリーの陰からステージを覗いたり、顔を引っ込めたりしていたら、悠馬さんの大きな手が私の手をぎゅっと握りしめた。


「朱梨の緊張を半分もらってあげるよ。
どう? 少しは楽になった?」

「……なりました」


優しい言葉と微笑みに、思わず胸がキュンとして、そのお陰で焦りが少しは減ったように思う。

しかし、なんとか心を落ち着かせたと思ったのも束の間、「朱梨さん」と後ろから呼びかけられて肩をビクつかせた。

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