副社長は束縛ダーリン
彼の口元に嬉しそうな笑みが広がる。
涼しげな切れ長二重の瞳は少し潤んでいて、私の言葉に感動しているような雰囲気だ。
それを見て私も嬉しくなり、悠馬さんの手を取って両手で握りしめ、満面の笑みを向ける。
そして、さらに彼を喜ばせようと、私にとっては最上級の愛の言葉を口にした。
「悠馬さんが誰よりも、なによりも大好きです。コロッケよりも大好きだって、勝負の後に気づきました!」
「そうか……ん? ちょっと待て。それって、今までの俺は、コロッケ以下だったということ?」
それまで嬉しそうだった彼の顔がしかめられ、鋭い視線を向けられてしまう。
あれ、私はなにか言葉を間違えたのかな?
毎日のようにコロッケを食べて育ち、今は冷凍コロッケ開発に情熱を燃やす私にとっては、これ以上ないほどの愛の告白なのに……。
叱られそうな予感に首をすくめて、「あの、たまらなく好きってことなんですけど」とボソボソと言い訳すれば、眉間のシワは解いてもらえた。
「まぁ、いいか」と溜め息交じりに流されて、それから彼は立ち上がり、ドアに向けて歩き出す。