副社長は束縛ダーリン
背筋を伸ばして両手は膝の上に。
『はい』『すみません』を繰り返して、殊勝な態度を見せていると、悠馬さんは説教タイムを終わりに向かわせてくれた。
私の頭に大きな手がのせられ、少し強めに撫でられる。
「これからは、俺を振り回さないと約束してくれる?」
「はい。約束します」
「じゃあ、契約書を交わそう。これにサインして」
悠馬さんは背中に隠していた四つ折りの用紙を取り出し、広げてテーブルにのせた。
そのサイズはA3ほどで、茶色の枠組みの中に、悠馬さんの名前と住所、生年月日がすでに記入されている。
その隣の枠を指差す彼は、「ここに書いて」と私にペンを握らせ、「早く」と急がせる。
言われるがままにサインする私。
しかし、ペンを持つ手は名字を書いたところで止まってしまった。
「早く書いて」
「で、でも、悠馬さん、これって……」
急かされたためにすぐには気づかなかったが、どう見ても婚姻届と書かれている。
私が記入して押印し、証人欄に誰かふたりの署名捺印をもらえば、私たちが夫婦となれる重要な書類だ。