副社長は束縛ダーリン

そっか。これ、クリスマスプレゼントじゃなくて、婚約指輪だったのね。

どうりで大粒小粒、驚くほどに煌びやかなダイヤで飾られているわけだ。

やっと過ちに気づいて謝ろうとしたけど、「それじゃ、早く記入してね」と続きを促される。


「はい。今すぐ書きます!」


喜び勇んでペンを握り直し、必要欄に記入を終えると、婚姻届を悠馬さんに渡した。

すると、急に彼の口の端がなにかを企んでいるような雰囲気でニヤリと吊り上がる。


「これを提出すれば、朱梨のすべては俺のもの。これからの生活が楽しみだね。たっぷりの愛情で縛りつけてあげるから、覚悟して」


それって、束縛宣言……?

今でも充分すぎるほどに約束事が多いのに、これ以上なにを義務づけられるの?

あまり多いと、生活するのが大変なんですけど……。


約束事項を増やされそうな予感に冷や汗が流れる思いだが、決して嫌ではない。

束縛されることで、彼の深い愛情を感じさせてもらえるから。


戸惑ったのは一瞬だけで、すぐに心は大きな喜びの中に戻される。

束縛してもいいですよという意味で、「縛ってください」と口にしたら、悠馬さんは意表を突かれたような顔をした。

二度、目を瞬かせた彼は、その後にフッと柔らかく微笑み、涼しげなふたつの瞳に急に色を灯す。

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