副社長は束縛ダーリン
彼に似合う女になりたい
◇◇◇
悠馬さんが出張していた翌週の水曜のこと。
今日、六月二十一日は私の二十四歳の誕生日。
お祝いは週末でいいと言ったのに、『それじゃ誕生日を過ぎてしまう』と、悠馬さんはカジュアルフレンチの有名店を予約してくれた。
平日は大抵、遅くまで仕事をする彼。
私のために無理して時間を作ってくれるのが、申し訳なくも、かなり嬉しい。
社屋の一階は、出入口の近くにエレベーターホールがある。
そこには飲み物の自販機とベンチシートもあるので、定時で仕事を終えた私は、緑茶を片手に座って悠馬さんを待っていた。
でも、待つ場所を間違えたみたい。
エレベーターが開くたびに、退社する社員たちに声をかけられる。
「朱梨ちゃん、お洒落して、これからどこか行くの?」
「あ、はい。ちょっと食事に……」
「分かった、副社長とデートだろ? 若いっていいな〜」
カジュアルフレンチと聞いて、さっき更衣室でオフピンクの膝丈フレアワンピースに着替えていた。
いかにもこれからデートですといった格好だから、どこかのカフェで待っていた方がよかったのかもしれない。