副社長は束縛ダーリン
みんなが親しげに声をかけてくれるのは嬉しくても、冷やかされては照れくさく、返事に困る。
十五人ほどに『デート?』と聞かれて三十分が経過し、十八時半になると、悠馬さんがエレベーター横の階段を駆け下りてきた。
ちょうど一階に着いたエレベーターも扉を開けて、退社する社員たちを排出する。
その中に私に声をかけようとしている男性がいたが、近づく悠馬さんに気づくと焦りを顔に浮かべ、「お疲れ様です」と頭を下げた。
「お疲れ様でした」
社用の紳士的な微笑み方で応えた彼は、私に手を差し出す。
「朱梨、お待たせ。行こうか」
「はい」
その手に掴まって立ち上がると、周囲の視線を浴びていることに気づいた。
おじさんたちはニヤニヤして、女子社員は羨ましそうで……。
悠馬さんは私の腰に手を添えて、外へと歩みを促す。
その表情は平然としていて、恥ずかしがっているのは、どうやら私だけみたい。
こういう場面でも大人の彼と歳の差を感じ、自分は子供っぽいのではないかと心配した。