副社長は束縛ダーリン

二段の大きなケーキは、とてもふたりでは食べ切れないので、他の客にもサービスしてもらい、そのせいでお礼の言葉をあちこちからいただいた。

照れ笑いする私は、ケーキを味わいながら悠馬さんに言う。


「なんだか、くすぐったいですね」

「そう?」


微笑み合ったそのとき、私の斜め後ろのテーブル席から、クスクスと笑う声が聞こえた。

その笑い方に、なんとなく棘を感じて思わず振り向くと、四人掛けのテーブル席には、二十代後半に見える三人の綺麗な女性がいて、同じケーキを食べながら談笑していた。


気のせい……?

視線が合わなかったので、嫌な笑い方は私に向けられたものではないと判断し、前を向く。

しかし、今度はハッキリと聞いてしまった。
私を馬鹿にする言葉を。


「ケーキは美味しいけど、ムカつくわ。
あの程度の女に、どうしていい男がついてるの?」

「妹なんじゃない? カップルに見えないし」

「違うよ。全然似てないもの。
結論は、女の趣味が悪い残念なイケメンってことでしょ」


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