副社長は束縛ダーリン
しかし彼は、物足りなさそうな顔で、私の心配とは逆のことを口にした。
「あのとき、朱梨が欲しそうだったからそれにしたけど、思ったより安いね」
「え?」
あのときとは、どのときかと目を瞬かせる私に、悠馬さんは片眉を上げた。
「二月の終わり頃に、買い物したときだよ。
小丸百貨店のジュエリー売り場で、立ち止まって見てたよね?」
そう言われて、思い出した。
デートの途中で小丸百貨店に立ち寄り、彼は私に服やバッグを買ってくれたのだ。
記念日でもないのに申し訳ないと思いつつ、小丸百貨店を出ようとしたら、一階のジュエリーショップのショーケース前で、私の足は止まった。
このネックレスが、私好みのデザインだったから。
あのときに悠馬さんは『欲しいなら、買ってあげるよ』と言ってくれたけど、私は慌ててそれを断った。
すでにたくさん買ってもらったというのに、これ以上甘えるわけにいかないと思って……。