副社長は束縛ダーリン

外食をすると、いつもそう。

その間に悠馬さんが会計を済ませるから、食事代がいくらなのか、私は毎回知ることができない。

きっと高いのだろうと、大雑把に予想するだけだ。


私は居酒屋でもファミレスでも、悠馬さんと一緒なら、どこでも美味しく楽しく食事ができるのに、彼はそれじゃ満足できないみたいで……。


私に贅沢を与える彼に、嬉しいような申し訳ないような気持ちを抱えて席を立つ。

会計のカウンター横に細い通路があり、その奥の扉を開けた。

中に入ると、私のテンションは簡単に上がる。

店内のどこよりも、お手洗いが一番メルヘンチックな空間だったから。


洗面台は小鳥の水遊び場のようなデザインになっていて、ピチチと囀る音まで流されている。

ふたつある個室のドアも、壁紙も天井も、森をイメージした装飾が施され、飾り棚には陶器の動物がたくさん並べられていた。


「トイレに入ってよかったかも!」


無人のお手洗いで大きな独り言を呟いたら、後ろにドアの軋む音がして、数人が入ってきた。

洗面台の鏡越しに視線が合い、ハッとした。

さっき私を馬鹿にして笑っていた、女性三人組だったから……。

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