副社長は束縛ダーリン

「猫に小判?」とひとりが言うと、「豚に真珠でしょ」と、もうひとりが答える。

「あ、いい物見つけた!」と三人目の声がしたら、うつむく私の顔の前に、棚に飾ってあった陶器の子豚の人形が差し出された。


その子豚は丸々と太って、ピンクのワンピースを着た女の子。

頭に花冠を被り、首にガラス玉のネックレスをつけている。


「ほら、そっくり。子豚にダイヤモンド!」


笑われて悔しい思いをしながらも、言い返す言葉を見つけられず、私は三人を掻き分けるようにしてドアを開け、トイレから逃げ出した。


短い通路の先には、会計を済ませ、私のハンドバッグを手に待っていてくれる悠馬さん。

彼の側に駆け寄り、安全地帯に逃げ込めた気持ちでホッと気を緩めようとしたが、「どうした?」と問われて、焦りが湧いた。


多分、彼は私の目が潤んでいることに気づき、心配してくれたのだろう。

しかし、太った子豚の人形にそっくりと言われたばかりの私には、別の意味で心配されたように聞こえてしまった。

『どうした? 最近、太ったんじゃない?』と。

< 99 / 377 >

この作品をシェア

pagetop