【溺愛注意!】御曹司様はツンデレ秘書とイチャイチャしたい
いつものようにシンプルな黒いスーツ。ベージュのストッキングに黒いパンプス。
髪はじゃまにならないように、後ろでひとつに結ぶ。
窓ガラスの前で、きゅっと気を引き締めて背筋を伸ばす。
ガラスの中に映るのは、なにを言われても動揺しない、慌てない、常に冷静沈着の無愛想な秘書。
今日も一日、いつものように頑張ろう。
そう思っていると、専務の声が聞こえてきた。
「おはよう」
柔らかく笑いかけられ、頭を下げる。
「おはようございます、専務」
いつものように愛想のない挨拶を返してスケジュール帳を開く。
「今日の予定ですが……」
私の言葉を聞きながら、専務があくびをひとつ噛み殺す。
「眠そうですが、大丈夫ですか?」
心配になってそうたずねると、専務は笑って頷いた。
「大丈夫。二時間は寝られたから」
二時間。
ということは、私は帰ってからのことか。
もしかして、私が酔って迷惑をかけたせいで、専務は明け方まで寝られなかったってこと?
申し訳無さに、猫耳と尻尾がしょぼんと垂れ下がる。