【溺愛注意!】御曹司様はツンデレ秘書とイチャイチャしたい
役員室の前で頭を抱えてうずくまっていると、通りかかった桃井さんが不思議そうに足を止めた。
「どうしたんですか、冬木さん」
声をかけられおずおずと顔を上げると、桃井さんが目を見開いた。
「大変! 冬木さんの顔が真っ赤なんですけど! っていうか、冬木さんが無表情じゃない!!」
大事件だ、とばかりに声を上げた桃井さんに、慌てて首を横に振る。
「大丈夫です! なんでもないですから、騒がないで……!」
「うわ、冬木さんがこんなに動揺してるのはじめて見た! 一体なにがあったんですか!?」
「いや、ちょっと今日暑いから顔が赤いだけで……」
「暑くないですよ、むしろ寒いですよ?」
「わ、私ちょっと、外の空気を吸ってきます」
驚く桃井さんにそう言って、早足でフロアから逃げ出した。
やばいやばいやばい。
顔が熱くて仕方ない。
エレベーターではなく、非常扉の向こうの外階段へと向かい、分厚い鉄の扉を閉めて大きく息を吐き出した。
鉄骨でできた階段の手すりに額をつけて、へなへなとしゃがみ込む。