【溺愛注意!】御曹司様はツンデレ秘書とイチャイチャしたい
 

「詩乃ちゃん、大丈夫?」

突然すごい勢いで頭を横に振り出した私に、専務が驚いたように目を丸くする。

「な、なんでもないです! ただ、これからスーツをクリーニングに出しに行こうと思っただけで……っ」
「わざわざ外階段で?」
「ちょと気分転換です」
「ここ十三階だよ?」
「さ、最近運動不足だったので」

不審そうな専務に、無表情で言い訳を並べる。

「そう。階段から滑って、ケガをしたりしないようにね」

そう言った専務に、うまく誤魔化せたとホッとしながら、よろよろと立ち上がる。
すると、専務の腕がのびてきて、私の腰を引き寄せた。

「尻尾、ものすごい勢いで回ってるよ」

そう囁かれ、猫耳がパタパタと動く。
恐る恐る体をひねれば、混乱と緊張で逆だった尻尾が、ぶんぶんと音がなりそうなほど揺れていた。

「こ、これは……」

青ざめる私に、専務はにっこりと笑う。
くしゃりと目尻が下がる、人懐っこい笑顔。

「大丈夫。昨日添い寝してあげたことは忘れてあげるから、気にしなくていいよ」

私の目の前で人の良さそうな唇が、にやりと意地悪に歪んだ。

「……っ!!」

思い出したの、バレバレだった……っ!!


瞬時に赤くなった私に、専務は喉の奥で笑いながら腰から手を離す。
何事もなかったような涼しい顔で、非常扉からフロアの中へと入っていく専務の後姿を見送って、へなへなとその場にしゃがみこんだ。


「もう……、勘弁して」


専務から預かったスーツを抱きしめて、泣きそうな声でつぶやいた。


 
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