【溺愛注意!】御曹司様はツンデレ秘書とイチャイチャしたい
「なんだか久しぶりに帰ってきた気がするなぁ」
そうよく通る声で話すのは、専務の兄で副社長の弘人さん。
弘人さんは元々体格がよく男らしい雰囲気の人だったけど、長期間マレーシアやシンガポールに行っていたせいか日に焼けて、以前よりももっとたくましくなったように見える。
「やっぱり日本の方が落ち着くな」
そう言って、役員室や秘書室のあるフロアを見回す弘人さんに、専務が呆れたように笑う。
「そう言って、アジアだろうがアフリカだろうが、どこにいってもすぐに馴染むくせに」
「まぁね」
小さく肩を上げ、笑い合う。
弘人さんは東南アジアでの低温物流事業に参入するための下準備に、海外出張をすることが多かった。
元々海外旅行が好きで、学生時代はバックパッカーだったという彼は、どんな国だろうがどんな過密スケジュールだろうが、顔を輝かせながら飛行機に乗る。
「近いうち誠人も旅行がてらマレーシアに顔出せよ。向こうの社長がお前に会いたがってるぞ」
「誰かが世界を飛び回ってるせいで、こっちは旅行がてら海外に、なんて考えられないくらい大忙しなんだけどね」
そんな小さな皮肉は聞こえないフリをする弘人さんに、専務は呆れたようにため息をついた。
そして視線を上げ、お茶が乗ったトレイを持った私に気付くと、ふわりと笑った。