【溺愛注意!】御曹司様はツンデレ秘書とイチャイチャしたい
「そんな難しく考えないの。好きな物でも好きな食べ物でも、自分の好きなことを考えてたら、自然と頬が緩むでしょうが」
「好きなもの……」
つぶやいた瞬間、真っ先に専務の顔が浮かんでしまう。
笑うとくしゃりと目元が下がる、あの人懐っこい笑顔。
「そう、その表情でいいから」
そう言われ、ハッとした。
なに、関係ない専務の顔を思い浮かべてるんだろう。
落ち着け私。
慌てて首を横に振っていると、「さっさと行くわよ」と声をかけられ、慌てて大野さんの後を追った。
「お待たせしました」
そう言って専務の前に立つと、ぽかんと驚いたように口を開けた。
少し離れた場所から、まじまじとつま先から頭まで見つめられ、途端に恥ずかしくなる。
やっぱり似合わないだろうか。
光沢のあるサテンのドレスも、ふわふわした髪も、綺麗なネックレスも、華やかなメイクも。
無愛想で可愛げのない私がめかしこんだところで、滑稽でしかないのかもしれない。
不安になって壁の後ろに隠れたくなる。
ぺたりと猫耳がたれて、尻尾も垂れ下がる。
そんな私を見た専務が、「まいったな」と吐息だけでつぶやいた。