【溺愛注意!】御曹司様はツンデレ秘書とイチャイチャしたい
秋祭りと片想い
久しぶりに高校生の時の夢を見た。
思い出したくもない、嫌な思い出。
『お前みたいな可愛くない女と、本気で付き合うわけねぇだろ! うかれてんじゃねーよ』
そう投げつけられた冷たい言葉は、今思い出しても胸が痛くなる。
高校一年生の時、はじめて男の子から告白されて、はじめて付き合った。
引っ込み思案で無口な私とは正反対の、物事をはっきり言えるいつもクラスの中心にいるような、活発な男の子。
それが、千葉智紀だった。
真面目で大人しくて無愛想で、男の子とろくに話しもしたことがなかった私に、はじめて出来た彼氏だった。
嬉しくて、柄にもなく浮かれてしまった。
はじめてのデートは秋祭りの花火大会で、緊張しながら藍色に朝顔の柄の浴衣を着た。
いつもは簡単に縛るだけの髪をキレイに結い上げた。少しでも可愛いと思われたくて、赤い色付きのリップクリームをこっそり塗った。
そわそわしながら家を出る。
小さな町のあちこちにお祭りののぼりが立ち、夕暮れ空にぽつりぽつりと提燈が灯る。
頬を撫でた空気に、綿あめの屋台の甘い匂いが微かに混じっていた。