【溺愛注意!】御曹司様はツンデレ秘書とイチャイチャしたい
いつか酔っ払って、専務の腕の中で寝てしまった感触を思い出した。
ああやって擦り寄ってくっついて、甘えてしまいたくなる。
でも、そんなこと出来るわけがない。
私は唇を噛んで俯いた。
「……そうやって、ただの部下に必要以上に優しくされないほうがいいですよ」
固い口調で絞り出すように言うと、耳に触れていた専務の手が止まった。
「……ただの部下?」
「千葉くんのことも、気になさらないでください。猫耳のことを相談していただけなので」
「話したの? ハチのことも、クミコさんに言われたことも、全部?」
「はい。幼馴染みですから、親身になって相談にのってくれました。ですから、専務はもう私のことはお気になさらずに……」
「詩乃ちゃん」
私の言葉を遮って、専務が私の名前を呼んだ。
いつも私をからかう甘く柔らかい声ではない、微かな苛立ちと有無を言わさぬ色気を纏った低い声。
「本当に、君は自分が俺にとって、ただの部下でしかないと思ってる?」
「専務……?」
いつもとは違う迫力のある声色に驚いて顔を上げると、強引に腰を抱き寄せられた。
目の前に迫った逞しい体に、思わず後ずさると、すぐ後ろにあるデスクに足をぶつけバランスを崩しそうになる。