【溺愛注意!】御曹司様はツンデレ秘書とイチャイチャしたい
専務はお昼の会食から直接次の打ち合わせに向かい、私は会社に残り業務をこなしていると、夕方専務に同行していた男性秘書の乾さんから『先にあがってもいい』と連絡が来た。
専務と顔を合わせなくて済んだことにホッとしながら会社を出る。
エントランスの自動ドアが開くと、ザアッと大きな雨音が聞こえた。
朝から降り出した雨は、弱まることなく振り続け、アスファルトも街路樹もビルの壁も濡れそぼっていた。
傘を開き、駅まで歩こうと一歩足を踏み出した時、千葉くんの姿を見つけ立ち止まる。
「詩乃」
「……千葉くん、こうやって会社の前で待ち伏せするの、やめて」
黒い傘を差し歩み寄ってきた千葉くんを睨むと、「仕方ねぇだろ」と舌打ちをする。
「電話番号も家も知らないんだから、ここで待つしかねぇだろ」
「それは、そうだけど……」
「あの御曹司に聞いたか? 婚約の事」
そう問われ、顔が強張る。
その私の反応に、千葉くんは呆れたようにため息をついた。
「ほんとお前は、少しも成長してねぇな」
うんざりしたように言われ、腹が立つ。