【溺愛注意!】御曹司様はツンデレ秘書とイチャイチャしたい
 

「千葉くんに言われたくない」

十年前、ひどい言葉で千葉くんに一方的に振られた。
その記憶が、私をひどく臆病にさせている原因のひとつでもあるのに。

「まぁ、そうだよな」

私の言葉に、千葉くんがあっさりと頷いた。そしてこちらに腕を伸ばす。

「とりあえず、行くぞ」

そう言って、私の腕を掴むと歩きだした。
強引に左手をひっぱられ、右手には傘を持ち、転ばないように必死になって足を動かしながら千葉くんのことを見上げる。

細い路地をどんどん進む。
ひどい雨のせいか路行く人はほとんどいなく、ふたりの靴音と雨音だけが響いていた。

「行くって、どこに?」
「寺」
「お寺……?」

予想外の言葉に、驚いて目を見開いた。
体を強張らせた私を、千葉くんは振り返って口を開く。

「大学のときの友達に実家が寺の奴がいて、そいつに色々相談して、お祓いしてくれる場所教えてもらった」
「どうしてそんな場所に」
「除霊するぞ」
「は……!?」

 
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